家を建て替え出来るよう頑張っているから

家を建て替え出来るよう頑張っているから

実家に帰る途中、母親から、「家の鍵は、いつもの所に置いてあるから」と電話があった。
私が実家に帰るのは数年ぶりだったのだが、家の鍵はスグに見付けられた。
私は就職を機に家を出て、現在は実家から車で3時間ほどの都市部で暮らしている。
実家の玄関は、私が住んでた時と何も変わってない。父親が使っていたスキーセットが、今も置いてある。
玄関のドアがガラガラと開くと
母親、「自分の家なんだから、上がって待っててくれれば良かったのに」
私、「今、着いたところ」
パートから帰って来た母親が、スーパーの袋を持っているのは昔と変わらない。
家に上がる時、母親が「ヨイショット」と言うのも昔と変わらない。
台所の灯りが、付きが悪いのも昔と変わらない。
母親、「お腹は空いているだろ?」
このセリフも昔と変わらない。
母親、「お前が来るって言うから、メンチコロッケを買って来たよ、好きだろ?」
私、「うん」
とは言ったものの、本当に好きなのはハンバーグ。うちには、ハンバーグを買う余裕は昔から無かった。
台所のカレンダーに、大きな字で「塗装」と書いてあったため
私、「家の塗装をするの?」
母親、「13年経ったからね」
私が久しぶりに実家に帰って来たのは、父親の十三回忌だったから。
私、「パートはまだ続けるの?」
母親、「家に居ても暇だからね」

私の親は、お金に余裕は無かったが、私を大学まで行かせてくれた。
私の子供の頃の夢は、大きな家を建てて親と暮らすこと。
その夢を果たせないまま今日に至る私は、罪滅ぼしの意味を込めて仏前に外壁塗装代を置いた。
昔と違うのは、仏前で母親と並んで寝たこと。
私、「外壁塗装は、いつもと同じ業者さん?」
母親、「そうよ」
それを知って安心した。

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