記念の写真

記念の写真

70歳になる祖母は、一日中、家にいる、祖母の楽しみは時代劇を見ること。 私、「婆ちゃんは、時代劇ばかり見て飽きないのかな?」 母親、「物忘れがひどいから飽きないわよ」 物忘れが進んでいる祖母は、同じ時代劇を何回も見ている。 母親、「お母さん(祖母のこと)、今日から家の外壁塗装が始まりますから」 祖母、「分かったよ」 母親、「今日から家の外壁塗装が始まるからね」 私、「何度も言わなくても良いよ」 学校から帰った私は、祖母の部屋を確認するのだが、いつもはいる祖母がいない、時計を見ると時代劇が始まっている時間なのに。 トイレを見ても祖母はいない、どこへ行ったのだろう? 玄関を確認すると、祖母の靴がない。 祖母は勝手に出掛けたのか?だとしたら母親に連絡をしないといけない。 普段と違い家の中が暗いのは、家の外壁塗装をするのに防護ネットが張られているから。 塗装業者さんなら、祖母が家から出たのかを知ってるかもしれないと思い、業者さんに声を掛けてみると 業者さん、「お婆ちゃんなら屋上にいるよ」 私、「屋上?」 祖母が一日中、家にいるのは足腰が弱くなっているから、その祖母が屋上? 業者さんが使っている足場を使わせてもらって屋上に上がると、ヘルメットを被った祖母がいた。 私、「婆ちゃん、何をしているの?」 祖母、「屋上に上がれるのは外壁塗装をしてもらっている時だけだから、上がらせてもらったのよ」 私、「業者さんの迷惑だから下に降りよ」 業者さん、「せっかくですから記念の写真を撮りましょうか?」 私の部屋には、その時の写真が飾ってある、祖母とお揃いのヘルメットを被った私は顔が引き攣っているが、祖母はメッチャ笑顔で映っている。

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